相場と実務

坂のまちの駐車場——東濃の高低差と、雨の日の停めやすさ

坂に沿う土地に建つ家と、道路へ下る駐車場(イメージ)

土岐、多治見、瑞浪、恵那、中津川。東濃を車で走ると、道が上がったり下がったり、家々が斜面に沿ってならんでいるのに気づきます。山あいのまちですから、まっ平らな土地のほうが、じつは少ないのかもしれません。

だからこのあたりで家を建てると、道路と敷地のあいだに段差が生まれることがよくあります。「この高さの差で、車はどう停めよう」「傾いた土間は、雨の日や凍った朝に滑らないだろうか」そんな疑問が、外まわりを考えはじめると出てきます。今日は、坂のまちならではの駐車場——勾配の付け方、水の流れる先、そして仕上げの肌ざわりの話をしてみたいと思います。

坂に沿って家がならぶ東濃の街並み(イメージ)

駐車場の勾配は、どれくらいがいい?

先に結論めいたことを言うと、駐車場の土間には、ほんの少しだけ傾きをつけるのがふつうです。まったくの水平にはしません。目安として、百に対して二から三くらい——一メートル進んで二、三センチ下がるくらいの、ゆるやかな傾きです。

なぜ傾けるかというと、水を流すためです。土間コンクリートは水を吸いこまないので、降った雨は表面をつたって低いほうへ流れていきます。このゆるい傾きがあると、雨がやんだあと、水が一方へすっと引いていく。反対に水平に近すぎると、あちこちに水たまりが残って、朝までじめじめしていることがあるようです。

東濃のように高低差のある土地では、道路と敷地の段差そのものが、この傾きの元になります。道路が下、敷地が上、あるいはその逆。その自然な高さの差を活かして、車を停めやすく、水も流れやすい向きに勾配を決めていく。「どちらへ、どれくらい傾けるか」は、その土地の形と、玄関や道路の位置で変わってきますから、一律にこうとは言いにくいのですが、きつすぎず、水は流れる——そのあたりの匙加減を探るように思います。

冬の朝の凍結が気になる土地では、水が引きやすいことがそのまま効いてきます。水たまりが残らなければ、冷えこんだ朝に薄く凍る心配も、そのぶん減るからです。ゆるやかに傾けて水を逃がしておくと、寒い季節の朝が少し気楽になるのかもしれません。

土間コンクリートの仕上げは、どう違う?

同じ土間コンクリートでも、表面の仕上げ方でずいぶん表情が変わります。なかでも駐車場でよく使われるのが、刷毛引き(はけびき)と洗い出しです。

刷毛引きは、乾ききる前のコンクリートの表面を、ほうきのような刷毛でさっとなでて、こまかい筋目をつける仕上げです。手のひらで触ると、つるりとしていない、わずかにざらついた肌ざわり。この筋目があると、濡れたときや凍った朝に足や靴がすべりにくく、派手さはないけれど、駐車場や通路にしっくりなじむ仕上げのように思います。東濃の坂の多い土地で選ばれることが多いのも、このすべりにくさが理由のひとつかもしれません。

刷毛引き仕上げの土間コンクリートの筋目(イメージ)

洗い出しは、コンクリートの表面をうすく洗い流して、中にまぜた小さな玉砂利を、粒として浮かび上がらせる仕上げです。足元に細かな石が顔を出すので、見た目に趣が出て、和の庭先や玄関まわりにもよく合います。石の粒がほどよいでこぼこを生むので、こちらも濡れた足元でつるりとしにくい。見た目の味わいと、足元の落ち着きの、両方を持った仕上げだと思います。

洗い出し仕上げの玉砂利の肌(イメージ)

どちらがいい、という話ではなくて、車をたくさん停める広い土間なら、掃除がしやすく落ち着いた刷毛引き。玄関につづくアプローチや、目に入るところは、表情のある洗い出し。そんなふうに、場所ごとに肌を選び分けていくと、外まわりに奥行きが出るように思います。つるりと磨いた仕上げは見た目が美しい反面、濡れると足元がたよりなく感じることもあるので、歩く場所や車の出入りするところでは、少しざらつきのある肌を選んでおくと、雨の日が気楽です。

水は、どこへ逃がす?

勾配で流した水を、最後にどこへ受けるか。これが決まっていないと、せっかく傾けても、水が敷地の低いところや、お隣との境あたりにたまってしまうことがあります。

いちばんよくあるのは、土間の低い側に細い溝——側溝や排水溝を通して、そこへ集めた水を、敷地の排水桝から雨水の管へ流していく形です。道路側に流すのか、敷地の中で受けるのかは、まわりの造りしだいで変わります。

もうひとつ、地面にしみこませて逃がすやり方もあります。土間の一部を、水の通る目地や、砂利を敷いた帯にしておいて、そこから地中へ吸わせる。ただ、東濃は粘土質で、もともと水がしみこみにくい土地でもあります。(このあたりは「陶器のまちの土」の話でも触れました)土に吸われにくいぶん、このあたりでは「溝や桝で受けて流す」道筋を、はじめにきちんと決めておくことが、少し余分に効いてくるのかもしれません。

坂の下に玄関やお隣がある土地では、流した水がそちらへ向かわないように、向きと受け先を先に考えておく。水がどこから来て、どこへ帰っていくか——その道すじを一本、頭の中に描いておくと、雨の日の駐車場が、ずっと落ち着いたものになるように思います。

費用は、何で動く?

新築の外まわりを考えはじめると、駐車場の費用がどのくらいか、気になるところだと思います。金額は土地ごとにほんとうに幅があるので、はっきりした数字は出しにくいのですが、どういう条件で動くのかを知っておくと、見積もりを見るときに迷いにくくなります。

大きく効いてくるのは、次のあたりです。

ひとつは、高低差です。道路と敷地の段差が大きいほど、土を削ったり盛ったり、擁壁やスロープを組んだりと、土間を打つ前の下ごしらえに手間がかかります。平らな土地より一手間多くなる、ということです。

ひとつは、面積です。車一台ぶんか、二台三台ぶんか。広くなるほどコンクリートも下地も増えていきます。

ひとつは、仕上げです。刷毛引きと洗い出しでは、手間のかかり方が違い、費用にも差が出ます。一面を同じにするか、場所ごとに肌を分けるかでも変わってきます。

そして、排水です。溝や桝をどれだけ設けるか、水をどこまで導くか。ここも土地の形しだいで動きます。

数字を先に決めるより、「うちの土地は高低差があるから、下ごしらえに手間がかかりそうだ」「一台ぶんで、仕上げは落ち着いた刷毛引きにしよう」——そんなふうに、何にお金が向かうのかを見当づけておくと、見積もりの中身が読みやすくなります。安いか高いかで急いで決めるより、この土地で長く気持ちよく停められるか、そこを軸に選んでいけたらいいのだと思います。

坂の土地なりの、停めやすさ

平場の少ない東濃で車を停めるというのは、高低差とうまく付き合う、ということでもあります。

段差を厄介ものと決めつけず、その高さの差を、水を流す傾きに変えてしまう。足元には、濡れてもすべりにくい肌を選んでおく。流した水の帰る先を、先に一本決めておく。そうしておくと、雨の日も、凍った朝も、車の乗り降りが少し気楽になります。

坂のまちには坂のまちの、停めやすさの作り方があるように思います。この土地の形と付き合いながら、長く気持ちよく使える駐車場を、ゆっくり考えていけたらいいですね。

よくある質問

駐車場の勾配は、どれくらいつければいいですか?

土間コンクリートには、水を流すためにほんの少しだけ傾きをつけるのがふつうです。目安は百に対して二から三くらい、一メートルで二、三センチ下がるゆるやかな傾きです。これがあると雨がやんだあと水がすっと引き、水たまりが残りにくくなります。冷えこむ朝に薄く凍る心配も、そのぶん減るように思います。どちらへ傾けるかは、道路と敷地の段差や玄関の位置で変わるので、その土地の形に合わせて決めていくのがよさそうです。

傾いた土間は、雨の日や凍った朝に滑りませんか?

仕上げの肌を選んでおくと、足元が落ち着きます。刷毛引きは表面にこまかい筋目をつける仕上げで、濡れても凍っても靴がすべりにくく、駐車場や通路によく合います。洗い出しは小さな玉砂利を浮かせた仕上げで、見た目に趣があり、粒のでこぼこが足元をつるりとさせにくくします。つるりと磨いた仕上げは美しい反面、濡れるとたよりなく感じることもあるので、車の出入りや歩く場所には、少しざらつきのある肌を選んでおくと雨の日が気楽です。

高低差のある土地は、駐車場の費用が上がりますか?

高低差が大きいほど、土を削ったり盛ったり、擁壁やスロープを組んだりと、土間を打つ前の下ごしらえに手間がかかるぶん、平らな土地より一手間多くなります。ほかにも、停める台数(面積)、仕上げの種類、排水の造りで金額は動きます。数字は土地ごとに幅があるので一律には言えませんが、何にお金が向かうのかを見当づけておくと、見積もりの中身が読みやすくなると思います。安さより、この土地で長く気持ちよく使えるかを軸に選んでいけたらと思います。